学校心理士とは?
教育分野における心理系の民間資格
学校心理士は、一般社団法人 学校心理士認定運営機構が認定する民間資格です。学校をはじめとする教育現場などで、子どもや保護者、教員を対象に、学校心理学に基づいた知識と技能をもって、アセスメント・カウンセリング・コンサルテーションにあたります。
スクールカウンセラーとの違い
「スクールカウンセラー」と混同するかもしれませんが、「学校心理士」は資格名であるのに対し、「スクールカウンセラー」は職業名です。
スクールカウンセラーになるための資格要件は「公認心理師・臨床心理士・精神科医・大学教員の免許を持つ者」となっていますが、自治体によっては学校心理士の資格を持っていることで「スクールカウンセラーに準ずる者(準スクールカウンセラー)」として採用されるケースもあります。
これは「スクールカウンセラーに準ずる者」の条件が「児童生徒を対象とした相談業務について、5年以上の経験を有する者」である一方、学校心理士の申請条件も「学校心理学に関する専門的実務経験を5年以上有する方」であるなど、求められるレベルが近しいことが理由のようです。
学校心理士の資格を取るには?
受験資格(申請条件)を満たす→試験合格→登録の3ステップ!
「学校心理士」は資格の名前ですので、「なるには」というより「学校心理士の資格を取得するには」という話になります。以下のステップで資格を取得することができます。
1. 受験資格を得る(申請条件を満たす)
2. 試験に合格する
3. 登録をする
それぞれのステップについて、以下で詳しく説明します。
学校心理士の受験資格(申請条件)
学校心理士の受験資格について、試験実施団体のHP等では「受験資格」ではなく「申請条件」と記載されていますので、以下「申請条件」として解説していきます。
試験を受験するには、以下の「申請条件」のいずれかを満たしている必要があります。満たしている条件によって「申請類型」を1つ選択します。「申請類型」によって受験する試験項目が異なります。
■申請条件
(※以下のいずれかを満たしている必要があります)
・大学院で学校心理学関連の科目の単位を修得し、修士課程・専門職学位課程を修了し、学校心理学に関する専門的実務経験を1年以上有する方
・4年生大学卒業で学校心理学に関する専門的実務経験を5年以上有する方
・大学または大学院で授業を2年以上担当し、学校心理学の8領域に関する研究業績を5編以上有する方
・公認心理師資格を有する方(※学校心理士認定運営機構が開催する講習会に参加する必要があります。)
・学校の管理職または教育行政職として、心理教育的援助サービスに関する指導的な役割の経験を3年以上有する方(申請時において、その職を辞してから5年を経過した方は除きます)
申請類型 | 対象者 |
---|---|
学校心理学大学院類型 | 学校心理学関連大学院修了者および修了見込者対象 |
公認心理師大学院類型 | 公認心理師関連大学院修了者および修了見込者対象 |
教職大学院類型 | 教職大学院修了者および修了見込者対象 相談機関等の専門職従事者対象 |
学校教員類型 | 教員の経験を有する者対象(教育職員免許状もしくは保育士資格を有する者) |
相談機関等専門職類型 | 相談機関等の専門職従事者対象 |
大学職員類型 | 大学・短期大学等の教員対象 |
学校管理職類型 | 学校管理職または教育行政職の従事者対象 |
公認心理師類型 | 公認心理師資格を有する者 |
海外取得類型 | 海外での資格取得者対象 |
※詳細については一般社団法人 学校心理士認定運営機構のHPでご確認ください。
学校心理士の試験について
試験形式
以前は
・試験I(論述式)
・試験II(多枝選択式)
・試験III(面接)
という3種類で試験が行われていましたが、2020年度試験より、
・試験I(論述式)
・試験II(多枝選択式)
・試験III(面接)
・試験IV(講習会後)
の4種類の試験に変更されました。尚、申請類型によって受験すべき試験の種類が異なります。
試験日程
2022年度の学校心理士資格試験スケジュールをご紹介します。
■ 2022年度 学校心理士試験情報 ■
〇出願期間
2022/4/1(金)~6/20(月)(当日消印有効)
※大学教員類型は,2021/4/1(金)~4月30日(土)(当日消印有効)
〇試験日
・試験I(論述式)、試験II(多枝選択式):2021/8/7(日)
・試験III(面接):2021/8/20(土)、8/21(日) いずれか1日
・試験IV(講習会含む):2021/8/7(日)
〇合格発表
2022年10月~11月頃
〇受験手数料
手引き及び申請書 3,300円、認定審査料 33,000円
※その他、ガイドブック(2,200円)を必要に応じて購入。公認心理師対象の講習会では「ガイドブック」をテキストとして使用します。
※手引き及び申請書とガイドブックの同時購入についてはセット割引があります。(手引き及び申請書+ガイドブック→5,000円)
〇試験科目
試験I(論述式)、試験II(多枝選択式)、試験III(面接)、試験IV(講習会後)、ケースレポート(申請書類とともに提出)
※申請類型によって受ける試験が異なります。
〇試験地
・試験I、試験II
東京会場:東京成徳大学 十条台キャンパス(JR埼京線 十条駅南口より徒歩5分)
大阪会場:追手門学院大手前中・高等学校(京阪電車 天満橋駅14番出口より徒歩5分)
・試験Ⅲ
東京都文京区 学校心理士認定運営機構事務局
・試験Ⅳ
東京成徳大学 十条台キャンパス(JR埼京線 十条駅南口より徒歩5分)
〇試験実施団体
一般社団法人 学校心理士認定運営機構
学校心理士試験の合格率
学校心理士試験の合格率は公表されていませんが、周囲の情報によると合格率は60%程であると言われています。
大学院卒や実務経験5年が条件の試験で合格率60%ということは、難易度はやや高いと言えるでしょう。
不合格になる要因としてケースレポートが不合格になるケースが多いようです。ケースレポートのみが不合格の場合は、その後2年間に限りケースレポートのみの再審査を受けることができます。
学校心理士合格後の登録と更新
学校心理士合格後の登録手続き
試験に合格したら、日本学校心理士会へ登録料と会費を納めることで、学校心理士として登録され資格が付与されます。
資格取得は合格発表の翌年1月1日、資格有効期間は5年後の12月31日までとなります。
日本学校心理士会へ登録料と会費は以下の通りです。
- 登録料:20,000円
- 会費(5年分一括):30,000円
5年ごとに更新が必要
学校心理士の資格は5年ごとに更新が必要です。
更新の必要な年度の4月ごろに手続き書類一式が送付されます。申請期間はその年の9月初日から10月下旬ですので、忘れずに手続きをしましょう。
更新するためには学校心理士資格認定委員会が認める研修会やシンポジウムへの出席、登壇などを行うことで得られるポイントを10ポイント以上保有している必要があります。
ポイントは資格保有期間内に取得見込みの場合でも、更新申請をすることができます。
ポイントに関する詳しい情報は一般社団法人 学校心理士認定運営機構の「学校心理士資格更新」をご確認ください。
更新にかかる費用は以下の通りです。
- 更新審査料:11,000円
- 登録料:20,000円
- 会費(5年分一括):30,000円
更新を延長することができる
ポイントが足りない、更新手続きを忘れていたなどの理由で資格更新を延長したい場合は、資格有効期間内に限り「資格更新期間延長申出書」を提出することで1年間、更新を延長することができます。
延長は3回まで可能です。
延長の費用は1回6,000円です。
准学校心理士とは
准学校心理士の概要
准学校心理士は学校心理士に准ずる資格です。准学校心理士申請加盟校に認定されている大学、短大、専門学校に在学している者が資格を取得することができます。
准学校心理士を取得することで学校心理士を受験するのに必要な実務経験年数が5年から3年に短縮されます。
また、学校心理士が受ける研修に参加することができるというメリットもあります。
准学校心理士の資格を取得するには
准学校心理士の資格は個人で申請することはできません。准学校心理士申請加盟校が希望者を募り、学校単位で申請します。
試験はなく、以下のAタイプ、Bタイプのいずれかの申請条件を満たしたうえで学校を通して申請すれば資格を取得することができます。
■申請条件
【Aタイプ】
・教員免許または保育士資格を有するもの(取得見込みを含む)。
・申請時に大学・短大・保育等専門学校等に在学しており、申請年度に卒業・修了を予定している(科目等履修生や卒業見込みでない学生の申請は認めない。また、既に卒業している学生の申請も認めない )。
・在学時に機構が認定する「教育心理学」「発達心理学」 「教育相談(幼児理解や保育相談支援等の関連科目)」「特別支援教育(障害児保育等の関連科目) 」の内、3科目6単位以上を取得し、機構の書類審査に合格したもの。
【Bタイプ】
・文部科学省及び厚生労働省が確認する公認心理師資格カリキュラム対応大学学部を卒業するもの(見込みを含む)。
・申請時に大学・短大・保育等専門学校等に在学しており、申請年度に卒業・修了を予定している(科目等履修生や卒業見込みでない学生の申請は認めない。また、既に卒業している学生の申請も認めない )。
・文部科学省及び厚生労働省が公認心理師資格 対応と確認している「教育・学校心理学」「発達心理学」「障害者・障害児心理学」「福祉心理学」「心理学的アセスメント」「心理学的支援法」の6科目12単位を取得し、機構の書類審査に合格したもの。
准学校心理士の資格有効期間と更新
准学校心理士資格の有効期間は3年間です。ただし、1度だけ更新をすることができます。更新した場合、さらに3年間有効期間が延長されます。
また、准学校心理士として学校心理士の試験を受けられるのは、資格取得後3~6年の間になります。延長した場合は、資格取得後6~9年です。
准学校心理士の資格取得にかかる費用
初年度にかかる費用は15,000円です。内訳は以下の通りです。
- 審査事務手数料:3,000円
- 登録事務手数料:3,000円
- 年会費(3年分):9,000円
更新する場合は新たに、年会費(3年分)9,000円がかかります。
学校心理士やスクールカウンセラーへの道が難しそうな時は
学校心理士以外の、子ども向けの心理資格を目指す
学校心理士やスクールカウンセラー以外にも、子どもをサポートできるようになる心理学の資格や講座はあります。
おすすめは資格のキャリカレのチャイルド総合心理講座です。
この講座では一般財団法人JADP認定の「チャイルドカウンセラー資格」と「家族療法カウンセラー資格」のW資格を取得できるので、心の問題や障害などで悩む子どもと、その保護者をケアするカウンセリングスキルを身に着けることができます。
通信講座で心理カウンセラーの資格から始める
これまでご紹介した学校心理士やスクールカウンセラーは、専門知識を必要とする国家試験や大学での心理学の履修が必要です。現在社会人の方にとって、すぐに実現するにはハードルが高いと感じるでしょう。
では心理の初心者は学校心理士やスクールカウンセラーを目指すにはどうしたらいいか。
まずは初心者に合った資格から、段階的にレベルを上げることが、無難でオーソドックスな方法です。
具体的には、初心者レベルでありながらも協会の認定を得ている「メンタル心理カウンセラー」「メンタルケアカウンセラー」がリーズナブルで初心者からの支持を得ています。
それぞれの資格を資格する講座の詳細をは下記の通りです。無料でパンフレットを送ってもらえるので、迷ったら両方のパンフレットを並べて比較してみましょう。
学校心理士の活躍の場
小中高等学校、特別支援学校など教育現場で活躍!
学校心理士の主な活躍の場は教育現場です。幼稚園や小中高等学校、特別支援学校などで、児童・生徒、およびその保護者や教員の相談業務にあたります。
学校心理士は、地域によって「スクールカウンセラーに準ずる者」と認められることがあり、自治体によってはスクールカウンセラーや相談員として任用されることがあるようです。また、教育委員会や教育センター、教育相談所などで相談業務に従事する場合もあります。
関連資格
学校心理士スーパーバイザー(CSP-SV)と学校心理士補
学校心理士は、1997年度からスタートした資格です。2011年にはその上位資格として「学校心理士スーパーバイザー(CSP-SV)」の認定資格も誕生し、役割としては学校心理士へのスーパービジョンや研修会講師を行います。また、学校心理士の下位資格として「学校心理士補(※)」資格もあり、2019年1月1日時点で、学校心理士スーパーバイザー・学校心理士・学校心理士補の人数は約4,200名です。
※「学校心理士補」は、2017年度資格申請をもって廃止となりました。
まとめ
学校心理士は「スクールカウンセラーに準ずる者」と認められる場合があり、精神科医・公認心理師・臨床心理士・大学教員の免許を持っていなくても状況によってはスクールカウンセラーとして任用されることがあります。
ただし、基本的には精神科医・公認心理師・臨床心理士・大学教員の免許を持っている方の募集が優先されますので、学校心理士の資格だけを武器にスクールカウンセラーを目指すのは難しいかもしれません(※地域や学校の事情により異なります)。
しかしながら、資格の申請条件に大学での心理学修得や心理・教育に関する実務経験など厳しい条件が盛り込まれており、教育および学校心理における専門的な知識とスキルを有していることの証明となる資格です。すでに教育現場に勤めている方や、教育機関において心理学を活かした相談・支援業務に就きたい方のプラスアルファの資格として有用と言えるでしょう。
それぞれの資格を資格する講座の詳細をは下記の通りです。無料でパンフレットを送ってもらえるので、迷ったら両方のパンフレットを並べて比較してみましょう。