良い人だと思われたい心理「過剰適応」とは

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コラム
このページの監修者
城川 光子

1985年東京生まれ。私立渋谷幕張高等学校、上智大学文学部、関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻。
公認心理師・臨床心理士・産業カウンセラー試験合格。心療内科クリニックでのカウンセリング、小学校スクールカウンセラーなどの職務経験。

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過剰適応とは

誰しも「人からどう思われてるのだろうか」「人からよく思われたい」と思うことはあるのではないでしょうか。

円滑な社会生活を送るためにも、お互いに配慮し合うことは必要なことです。ただ、それが行き過ぎるとどうなるのか、今回は「過剰適応」についてお話ししましょう。

過剰適応とは、自分を抑えて他人に合わせようとしすぎること

「人からよく思われたい」が強くなると「人に嫌われるのが怖くて、良い人を頑張って演じてしまう」「ダメな奴だと悪い評価をされるのが怖くて、つい無理な仕事でも笑顔で引き受けてしまう」等、自分に無理をさせてでも周囲の期待に応えようとします。

このように他人に合わせようとする傾向が過度に強く自分の気持ちを否定し抑えること過剰適応と言います。

外的適応と内的適応

過剰適応とは、少し難しく言うと、外的適応他人に合わせること)が強すぎ、内的適応自分の気持ちを大切にすること、自分のやりたいことと態度が一致していること)が弱く、両者のバランスが崩れている状態ということができます。

自分軸でなく、他人軸の状態、ともいえるかもしれません。

周囲に合わせすぎることの弊害

もちろん、何がなんでも自分中心、自分がちょっとでも無理だと思ったら何もやらない…そんな風にしていたら、ものごとはうまく回りません。ある程度、自分の既存の枠を越えた挑戦は、新しい経験となり成長につながります。

しかし、周囲に合わせるのが過剰になったときには、週末にどっと疲れて何もできない無気力になったり、突然気持ちが爆発してしまったり、心身の不調となって現れたりします。

自分の気持ちが正しいかわからないため、自己決断できず、自立することができない側面もあるでしょう。

過剰適応のしすぎは幸福感の低下に

実際に過剰適応の傾向が高いほど幸福感が低下するそうです。

それだけでなく、過剰適応の傾向があると「どうせ無駄だよ」など他人に言われた嫌な言葉や、「私なんてダメだ」など自分で自分を否定する言葉を頭の中で何度も繰り返してしまう“反すう”が多く、自己否定感抑うつにつながると言われています。

周りに合わせすぎると、存在を軽視されることも

自分としては周りのことを思って合わせているのに、それが当たり前になって評価されない、自分はどんどん苦しくなる、そんなこともあるかもしれません。

自分だけ我慢すればいい、やりたくなくても無理してやる、気に入られたい、期待に応えたい、嫌われたくない…そんなひたむきな努力は意外にも評価されないことが多いのではないでしょうか。

「良い人」は言い換えると「都合の良い人」と思われる場合があり、「NO」や「それは違う」と答えないために、存在を軽視されてしまうからです。

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過剰適応になってしまう原因は?

ではなぜ「過剰適応」になってしまうのでしょうか。

過剰適応の背景には、たとえば下記のようなケースが挙げられます。他人に嫌われたら生きていけないという思い込みは、幼いころから周囲の顔色をうかがって生きてきた名残と言えるでしょう。

過剰適応の背景(例)
・親が不安定であったり病弱であるなど、子どもの頃から親の面倒をみたり家事をしてきた
・親の愚痴を聞く役割をしてきた
・あまり褒められず否定ばかりされてきた
・きょうだいが病弱なため親がかかりきりで、自分がしっかりすることで家族を支えようとした
・学童期にいじめや嫌がらせを受けて、自分を出すのが怖くなってしまった

幼少期にこのような環境で過ごすと、自分より相手を優先する行動様式が身に付いてしまいます。

ありのままの自分を親や周囲に肯定してもらえず、自分のままでいい、自分を大切にするという自己愛の感覚が育たず、自己評価が低くなりがちです。

自分らしさがよくわからない、自分に自信がないことから、相手に合わせるしかないのです。

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過剰適応から抜け出すには

では過剰適応から抜け出すためにはどうしたらいいのでしょうか

ひとことでいうと「周囲に合わせすぎるのをやめる」ことと、「自分のことを大切にする」ことです。

外的適応を弱めて内的適応を高めることで、両者のバランスを取っていきます。他人軸でなく自分軸で生きる、とも言えるでしょう。

「周囲に合わせすぎるのをやめる」

周囲に合わせすぎるのをやめるにはどうしたらいいでしょうか。普段から言われたらなんでも引き受けるのが当たり前になっていると、どこからが他人優先になっているかわからず、意外と難しいのです。

そういうときは、とにかく時間をおいてみましょう。週末のうち1日はひとりでのんびり過ごすといいかもしれません。

人付き合いも時間をおいて見直しを

例えば初めて会った人と話して、その場ではすごく盛り上がったけれども、あとからドッと疲れた…、恋人と過ごして相手に気を遣い続けてデートは問題なく終わったけど、思い返すと自分は全然楽しくなかった…ということがあるかもしれません。

その場では自動的に相手に合わせてしまって分からないのですが、ふと1人になってゆったりしているときにそのことを思い出し、どんな感情になるか思いめぐらせると、自分の本音が浮かんでくることがあります。

できたら、思い出して穏やかになれる、嬉しくなれる相手といられるといいですよね。

仕事の依頼も、即答せずにひと呼吸を

仕事の依頼も、即答せずに「スケジュール確認して返答しますね」と、ひと呼吸、時間をおいて、自分の仕事の優先順位はどうか、期日がいつだったら可能か、本当に自分がやる必要があるのか、など、逡巡する時間を持つといいかもしれません。即座に周囲に合わせる自分に待ったをかけて、時間をおいてみましょう

立場上どうしても引き受けざるを得ない仕事もあると思いますが、そういう場合は無理をすることを自分で自覚し、その分あとで自分をいたわるようにします。

「自分のことを大切にする」

自分を大切にするためには、まず自分の気持ちに気づくことです。

先ほどもあげましたが、1人になったときに、自分はどんな気持ちなのか感じてみること、もっと単純に言えば「快」か「不快」かを感じてみることから始めてみましょう。快・不快は人間の生き延びるための原始的な感情ですので、ここから感じてみましょう。

それができたらその強さは10段階でいうといくつか数値化してみるのもいいでしょう。

本当は7ぐらい不快だったのにすごく我慢していた、意外と2ぐらいで平気だった、など自分の気持ちに気づいていけるでしょう。

自分で意思決定する

そして、ベストでなくても自分で決定することを繰り返しましょう。

小さいことでは今日のランチをどうするか、友人や仕事仲間任せにせず、自分の体調や気持ちを基準に考えてみるのもいいですね。

自分の意見を伝える

何より伝えていきましょう。主張が苦手な方は、何か言うとなると自分の意見を押し付けるような気がしてしまいますが、お互いの気持ちを大事にしたアサーションなども学ぶと、自信を持って伝えられるようになるでしょう。

また自己評価が低いと、他人に何か指摘されると、非難された、傷ついたと感じてしまうことがあります。あくまで意見に対するコメントであって、自分自身が否定されたわけではない、むしろ意見されるくらいの主張ができている、存在感のある自分を褒めていいと思います。

もしこれをパートナーなどが読む機会があれば、周りの人は本人の気持ちを引き出すようにして欲しいです。特に人と違う意見が言えたときには評価してあげましょう。

子育て中の方へ

これを読んでいる人の中で子育てをしている方がいたら、子どもに自分の気持ちを抑えてまで相手を優先するように言っていないか気をつけましょう。本人の気持ちや言い分も、アドバイスしたい気持ちをぐっとこらえて否定せずに聞いてみましょう。

また、親も人間なので、習い事や学校など自分の期待に沿うように勧めることはあると思います。しかし、あくまで親の期待であることを自覚し、子どものやりたいこととはきっちり線引きをし、期待に沿わないと見捨てるという脅しや、強制するのはやめ、子どものやりたいことも聞いてみましょう。

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まとめ

いかがでしたでしょうか。

過剰適応は、周囲に無理に合わせようとし、同時に自分に行き過ぎた抑制をかけてしまい、その結果自己の内面が不安定になる弊害があります。

そういう側面があると感じた場合は、ぜひ先ほどの対策を試してみたり、1人では難しい場合はカウンセリングで一緒に考えていくのもオススメです。ぜひ自分軸の人生を取り戻してください。

参考文献
・浅井継吾(2015)「過剰適応と幸福感との関係―直線的関係と曲線的関係からの検討―」東北大学大学院教育学研究科研究年報第64集第1号, pp151-163.
・岡田尊司(2013)『働く人のための精神医学』PHP新書.
・荻田純久,善明宣夫(2018)「過剰適応の発生機序に関する基礎研究」教職教育研究センター紀要,23号, pp11-16.
・霜村麦,奥野誠一,小林正幸(2016)「過剰適応傾向のある大学生の抑うつを抑制する心理的要因 : ネガティブな反すう傾向と社会的スキルに注目して」東京学芸大学教育実践研究支援センター紀要12, pp 23-31.

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