アダルトチルドレンとは

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この記事を書いたのは
城川 光子

公認心理師・臨床心理士・産業カウンセラー試験合格。心療内科クリニックでのカウンセリング、小学校スクールカウンセラーなどを経験。
2児の母として子育てをしながら、「心理資格ナビ」の記事監修も担う。

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アダルトチルドレンとは

機能不全家族で育ち、生きづらさを感じている人たち

アダルトチルドレンという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

大人になりきれてないこども、など誤解されることもありますが、元々は1970年代アメリカアルコール依存症の家庭で育って成人した人(Adult Children of Alcoholics)を指していたのが、現在ではアルコール問題に限らず、機能不全家族安全な場所として機能しない家族の中で育ち、そのために様々な人間関係の問題や、生きづらさを感じている人たちのことを指すようになりました。略してAC(エーシー)とも呼ばれます。

一説には日本の8割が機能不全家族とも言われるので、もしかすると人ごとではないかもしれません。

アダルトチルドレン5つのタイプ

アダルトチルドレンと一言でいっても様々ですが、代表的なタイプ分けを紹介します。

(1)ヒーロー (優等生)

優等生、しっかりした子として家でも学校でも評価されようと頑張ります。何もかも完璧にこなそうと努力に限りはありません。ただそれは自分のためではなく、家族の期待に応えるため、一家の誇りとして家族を支えるためといったものです。

(2)スケープゴート(問題児)

家でも学校でも何かとトラブルや問題を起こします。授業妨害・極端に低い成績・暴力など様々です。家族の問題や不満や怒りといったものを「みんなあの子が悪い」「あの子のせいだ」として一手に引き受け、家族のバランスを取ろうとします。本人は傷付いていますが、寂しい、辛いとは言えず、次の攻撃的な行動に移します。

(3)ロスト・ワン(いない子)

目立たず、ひっそりと気配を消し、家でも学校でも存在をつい忘れられています。旅行にも連れて行ってもらえないこともあります。息をひそめて緊張した家族関係から身を守っています。本当は誰かと繋がりたいのですが、怖くて自分の殻に閉じこもっています。

(4)ピエロ(道化師)

面白いことや、冗談を言って場を和ませたり、争いが起こらないようにします。とても気を配って、人の表情を伺い、険悪な雰囲気にならないように最新の注意を払っています。自分の辛さもまっすぐ言葉にはできず、軽く表現したり、ごまかしたりして、誰かと真剣な話をしたり深い関係になるのが苦手です。

(5)ケアテイカー(世話役)

親の愚痴を聞いたり、家事や弟・妹の世話をしたりとひたすら周囲の人間の役に立とうとします。自分が疲れていても、人のことばかり優先し、困っている人を助けます。自分のやりたいことを聞かれると困ってしまいます。


どうでしょうか。自分も少し当てまる、友人がこれに近い、小学校の時の友達はこれだったのかなど、どこか心当たりはあるのではないでしょうか。また、第一子は優等生やケアテイカー、第二、三子はスケープゴートやロスト・ワン、末っ子はピエロの役割を期待されることが多くなるとも言われています。

どの役の子どもも「これで十分だ。よくやった」とは言ってもらえず、家族の根本的な問題は解決せず、「自分はまだまだ足りない」と頑張り続けます。「役立っていないと自分には価値がない」とも思っています。ありのまま、そこに存在することを許されていないのです。そうすると大人になっても生きづらさを感じることになります。

アダルトチルドレンに共通する“生きづらさ”

「がんばりすぎる」「自分を大切に思えない」など…アダルトチルドレンの傾向

アダルトチルドレンにはどんな生きづらさがあるのでしょうか。いくつかアダルトチルドレンに共通する傾向を挙げてみましょう。

アダルトチルドレンに共通する傾向

「がんばりすぎてしまう」
自分を休ませるのが苦手でなかなかリラックスできず、残業続きでも休日出勤でも求められれば頑張ってしまう、たまに休みがあっても予定を詰め込んでいて、余裕がない。

「自分の感情がわからない」
いつも人の期待や要求を敏感に感じ取って応えているので、本当は辛くてもわからないなど自分の感情をうまく感じられない、自分に必要なことや、やりたいことがわからない。

「自分の意見を主張できない」
自分の意見や不快感があっても、相手の反応が怖くて、表現することができない。我慢するのが常態化してしまい、突然不満が爆発してしまうことも。

「境界線が曖昧」
受け入れたくない要求を引き受けてしまったり、相手がすべきことも自分が先回りしてやってしまう、尽くしすぎる、逆に相手をコントロールして思い通りに動かそうとする。

「自分をありのままでいいと思えない」
相手に必要とされることで自分の存在価値も見出す。何事も完璧でないと気が済まず、自分を追い立ててがんばる。

「自分を大切だと思えない」
自分を大切に思えず、自分のために何かすることができない、「自分なんてダメだ」という自己否定感や無価値感がある。

心の穴を埋めるための行動、アディクション

アルコール依存、ショッピング依存など…心の穴を埋める不健康な習慣

アダルトチルドレンは、こういった心の穴を埋めるために、しばしば何かに没頭しようとします。

そうして不健康に習慣づけられた行動を「アディクション」と呼びます。アルコール依存薬物依存摂食障害仕事依存ショッピング依存ギャンブル依存ゲーム依存セックス依存…などとありますが、どれも”自分の辛さや虚しさを一時的に紛らわせてくれるだけ“にすぎず、これらが進行していくと人生を破壊することにつながりかねません。

また人間関係への依存は「共依存」とも呼ばれますが、DV・モラハラ・借金・浮気・アルコール・ギャンブルなどの問題があっても相手と別れられない場合は注意が必要です(※共依存の記事もぜひ読んでみてください)。

他にも不安障害うつ病PTSDパーソナリティ障害などの形で診断されることもあります。

表に出るバリエーションは様々ですが、問題の根っこに共通するのは何かに依存しないと埋められない心の穴があることです。

心の穴との向き合い方

心の穴と向き合い、自分を取り戻すことは可能

ではこうした心の穴はどうしようもないのでしょうか。そんなことはありません。

私自身も母の愚痴を聞くケアテイカー的な役割を背負っていたように思います。人のことには一生懸命になれても、いざ自分のこととなると何がしたいかよくわからない面がありました。大学でキリスト教精神を活かした人間学という必修の授業があったのですが「自分を愛する」ということがテーマだった時に「愛するって人に向けるもので、自分に向けるものなの?!」と衝撃を覚えましたが、当時は自分を大切にするということが何も分かっていなかったのです。

それが大学院で心理学を学ぶうちに、本を読んで自尊心やアダルトチルドレンのことを学び、自分の中の満たされていない部分を見つめ直したり、繰り返す人間関係のパターンから学んだり、実習や研修、個人的に依頼したカウンセリングなどを経て、だいぶ癒され、自分を取り戻したように思います。

アダルトチルドレンのタイプ別の長所

先ほど、アダルトチルドレンのタイプ分けを紹介しましたが、そのタイプだからダメというわけではありません

ヒーローは勤勉な努力家で周りからの信頼も厚いかもしれません、スケープゴートには勇気と行動力があり、ロストワンは豊かな想像力が、ピエロはユーモアがあって周りを和ませ、ケアテイカーはこまやか、といったように長所にもなります。完璧な家族、完璧な人間などいませんので、ご自身や友人の良いところを探し、認め合い、補い合っていきたいですね。

私自身もケアテイカーとして人の話を聞くことや周りへの配慮を忘れない点は残しつつも、他人だけでなく自分自身の声も聞くようにして、無理しないようにしたり、休む時間を確保したり、パートナーや友人に言いたいことを主張するようになりました。

大人になってからも人は変化することができます。もともとの自分の特徴も活かしながら、バランスをとっていきたいですね。もちろん、一生が自分と向き合う旅だと思っているので、生きていくうちに向き合うべきことや解決できないことがあれば、まずは自分で、時には専門家の力を借りて、自分自身を見つめていきたいと思っています。

今の自分を変えたいなら

もし「今の状況を変えたい」、「自分自身をなんとかしたい」と思われていたら、変わろうと思った時から変わり始めることができるのではないでしょうか

本を読む、ワークブックに取り組む、カウンセリングを受ける、何か症状がある場合は精神科や心療内科など医療機関にいく、自助グループに参加する、行動を起こすことで少しずつ何かが良い方向に進んでいくと思います。個人的なオススメはカウンセリングです。どうしても1人でやっていると、同じ場面を何度も思い出すだけで変化がなかったり、同じ悩みを堂々巡りしてしまうのですが、カウンセラーに相談して、過去を振り返る上で客観的な視点をもらったり、辛くなった時に支えてくれもらえると、気持ちの整理が進みやすいのではないでしょうか。

もちろんそういった経験はカウンセラーになる上でも役立ちます。カウンセラーは自分の中で解決していることや受け入れている分だけ、相談者の話をじっくり聴くことができます。自分がすごく葛藤のある分野については、心おだやかに聞いていられないですよね。自分に統合した分だけ、広く相手を受け入れられるように思います。

アダルトチルドレンは正式な精神疾患名ではありませんが、実際の臨床では広く活用されている分野だと思います。自己理解にもカウンセリングの技術向上にも、ぜひ学んでみてください。

■参考文献■
・アスク・ヒューマン・ケア研修相談センター(2009)『アダルト・チャイルドが自分と向き合う本』アスク・ヒューマン・ケア
・白川美也子(2017)『赤ずきんとオオカミのトラウマ・ケア 自分を愛する力を取り戻す〔心理教育〕の本』アスク・ヒューマン・ケア
・西尾和美(2011)『アダルト・チルドレン 癒しのワークブック 本当の自分を取り戻す16の方法』学陽書房

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