臨床心理士とは
心理ケアにおいて実績のある資格!
長年、日本の心理業界を牽引してきた臨床心理士。臨床心理士は、公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格です。民間資格ではありますが、資格取得の厳しい条件や1988年の資格創設以来の実績により、心理系資格の最難関の1つとして知られる資格です。
心理カウンセラーの求人を見ても臨床心理士を応募資格としているところが多く、カウンセラーとして活躍したい方はぜひ取得しておきたい資格と言えるでしょう。
臨床心理士になるには
臨床心理士になるには、指定大学院卒業ののち、筆記試験と口述試験をパスし、資格登録をする必要があります。また、資格登録後も5年ごとの資格更新制度があります。
臨床心理士の仕事
臨床心理士について、資格認定協会のサイトには下記のように記されています。
臨床心理士は、人(クライエント)にかかわり、人(クライエント)に影響を与える専門家です。しかし、医師や教師と異なることは、あくまでもクライエント自身の固有な、いわばクライエントの数だけある、多種多様な価値観を尊重しつつ、その人の自己実現をお手伝いしようとする専門家なのです。
公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会のホームページより引用
一人ひとりに徹底的に寄り添い、その人(クライエント)の方向性を支援していくことが、臨床心理士の核と言える部分かもしれません。
臨床心理士の仕事としては臨床心理学に基づく知識や技術を用いた臨床心理査定(アセスメント)、臨床心理面接(カウンセリング)、臨床心理的地域援助(コンサルテーション)調査・研究などがあります。活躍する分野は、教育、医療、保健、福祉、司法、産業など多岐に渡ります。
以下に、臨床心理士の資格取得するまでの流れや試験内容、受験資格などを詳しく紹介していきます。
臨床心理士の資格取得をするには?
臨床心理士になるためのステップ
臨床心理士の資格取得するには、以下のステップをクリアする必要があります。
1.受験資格を得る
2.試験(資格審査)に合格する
3.資格認定証書の交付手続きと登録をする
臨床心理士には受験資格として、指定大学院もしくは専門職大学院の修了などの条件が定められています。また、試験合格が資格取得ということではありません。資格認定証書の交付手続きをおこない、日本臨床心理士名簿一覧に登録されて、はじめて臨床心理士となるのです。
以下で、受験資格、試験(資格審査)の概要、資格認定についてそれぞれ詳しく見ていきます。
臨床心理士試験の受験資格は?
基本的には指定大学院or専門職大学院の修了が条件!
試験の受験資格を得るためには、基本的に指定大学院もしくは専門職大学院の修了が必須です。
受験資格には以下のパターンがあります。
1. 第1種指定大学院を修了する
指定大学院(2017年4月1日時点で全国に159校あり)を修了することで、直近の試験から受験できるようになります。
2. 第2種指定大学院を修了+心理臨床経験1年
第2種指定大学院(2017年4月1日時点で全国に9校あり)を修了した場合、実務経験1年で受験資格が得られます。
3. 諸外国で上記と同等の教育歴+日本国内での心理臨床経験(※)が2年
該当者は少ないのではないかと思います。気になる方は資格認定協会に問い合わせましょう。
4. 臨床心理士養成のための専門職大学院を修了する
研究科名はさまざまですが、専門職大学院(2017年4月1日時点で全国に6校あり)で臨床心理学専攻などの専門職学位課程を修了後、直近の試験から受験が可能になります。
5. 医師免許取得者で、取得後に心理臨床経験(※)が2年以上ある方
(※)心理臨床経験について
教育相談機関、病院などの医療機関、心理相談機関などでの心理相談員やカウンセラーとしての経験を指します。有給を原則としているので、ボランティアなどの活動の場合は、心理臨床経験とは認められません。
上記の中で、『1. 第1種指定大学院を修了する』のがこれから臨床心理士の資格取得を目指すうえで一番オーソドックスなルートといえるでしょう。
第1種指定大学院と第2種指定大学院の違い
●実習施設で実践的な面接を行えるかどうかの違い
第1種指定大学院の場合、学内に実習施設があり担任教員の元で実際に相談者との面接をすることができます。一方で第2種指定大学院の場合は、学外の施設で実習を行わなければいけないこと(学内に実習施設がないこと)が多く、実践的な面接を行える機会は少ないようです。
●それぞれに該当する大学院数
それぞれに該当する大学院数は、2020年7月1日時点のデータで第1種指定大学院が157校、第2種指定大学院が8校となっています。
指定大学院と臨床心理士専門職大学院の違い
●養成目的の違い
指定大学院は通常の大学院と同じく研究を行うことが必須であり、研究者養成を目的としています。対して専門職大学院は、専門的な知識や実践経験を増やし、実践家を養成するのが目的です。
専門職大学院では、修士論文は必須ではなく臨床心理士資格試験(1次試験)の際の小論文が免除されるという違いがあります。
「臨床心理士はハードルが高い…」と感じた方は
このように、臨床心理士になるには大学院の修了が条件となります。
もし、「自分には少しハードルが高いかも…」と感じた方は、 認定心理士やメンタル心理カウンセラーを検討してみてください。
これらの資格は初心者向けで、臨床心理士に比べると資格取得のハードルが低くなります。
臨床心理士の試験日は?
筆記試験を10月、口述面接試験を11月に実施!
まずはじめに、臨床心理士試験は「試験」ではなく「資格審査」と呼ばれています。当サイトでも「資格審査」として紹介していきます。
臨床心理士の資格審査は、筆記試験(一次)が毎年10月に、口述面接試験(二次)が11月に実施されています。
資格審査を受けるには受験申込の受付期間内に手続きを済ませる必要があります。受験申請のために必要な書類についても請求期間が決められていますので、こちらも注意が必要ですね。
以下で、2021年実施試験のスケジュールを紹介します。
項目 | 内容 |
---|---|
資格審査日程・時間 | 筆記試験(一次試験) 2021年10月9日(土) 口述面接試験(二次試験) 2021年11月13日(土)、14日(日)、15日(月) |
資格審査申請書類請求期間 | 2021年7月5日(月)~8月13日(金) |
受験申し込み期間 | 2021年7月6日(火)~8月31日(火)(当日消印有効) |
試験場所 |
筆記試験(一次試験) 東京ビッグサイト (東京都江東区有明3-11-1) 口述面接試験(二次試験) 東京国際フォーラム (東京都千代田区丸の内3-5-1) |
出題数・試験形式 | 筆記試験(一次試験) 出題数:100題 出題方式: ・マークシートによる「多肢選択方式試験」(150分) ・定められた字数の範囲内で論述する「論文記述試験」(90分) 口述面接試験(二次試験) 受験者個別に時間指定で面接委員2名による口述面接試験を実施。 ※注) 筆記試験(一次試験)の「多肢選択方式試験」で、一定水準の成績を満たした方のみ実施となります。 |
出題内容 (求められること) |
多肢選択方式試験 ・心理学についての幅広い基礎知識 ・臨床心理士の基本業務(4種)についての基礎的・専門的知識 (臨床心理査定・臨床心理面接・臨床心理的地域援助・それらの研究調査) ・臨床心理士に関する倫理、法律等の基礎知識および基本的な姿勢や態度にかかわる問題 論文記述試験 ・心理臨床に関する1題のテーマについての論述記載 (1,001字以上1,200字以内の範囲内) 口述面接試験(二次試験) ・臨床心理士としての基本的な姿勢や態度、専門家としての人間関係能力 |
合格発表日 | 2021年12月下旬 |
受験手数料 | 30,000円 |
臨床心理士の合格率は?
合格率は60%~65%ほど!
臨床心理士の合格率は60%~65%程度で推移しています。
受験申し込みまでの手順は?
申請書類の請求と受験手続き
受験申し込みまでの手順を紹介します。
1. 申請書類を請求
まず、臨床心理士試験の受験申し込みをするうえで必要な書類を請求する必要があります。
請求できる期間(受験申請書類の請求期間)が決められていますので、余裕を持って請求するようにしましょう。
【請求方法】
郵便局備え付けの振替用紙を用いて、氏名、住所(送付先)とともに通信欄に「申請書類○部希望」と明記し、下記口座へ送金します。
・書類請求費用: 1部1,500円
・郵便振替口座番号: 00130-1-362959
・加入者名: (公財)日本臨床心理士資格認定協会
送金後、通常1週間から10日程度で申請書類が届きます。
2. 受験手続き
受験申し込み期間内に申請書類を提出し、資格審査料(30,000円)を納付します。
手続き後、受験資格の有無が確認され次第、『臨床心理士資格審査受験票』が送付されます。
受験申請について不明な点がある場合は日本臨床心理士資格認定協会へお問い合わせください。
■ お問い合わせ先
公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会
〒113-0034 東京都文京区湯島 1-10-5 湯島D&Aビル3階
TEL : 03-3817-0020 FAX : 03-3817-5858
臨床心理士の試験合格後にすべきことは?
資格認定書の交付手続き
資格審査に合格しただけでは臨床心理士として認定されません。
合格通知を受け取ったら、期日までに資格認定証書の交付手続きする必要があります。この手続きを完了することで「臨床心理士」の資格認定証書と、携帯用の身分証明書として本人の顔写真を貼付した資格登録証明書(IDカード)が発行され、臨床心理士を名乗れるようになります。試験に合格したら必ず資格認定書の交付手続きをするようにしましょう。
臨床心理士の資格認定がなされると『日本臨床心理士名簿一覧』に登録されます。2019年には37,249名の臨床心理士が認定されています。
資格更新制度
臨床心理士には資格更新制度があり、5年に一度の更新手続きが必要です。学会発表や講師参加で4ポイント、司会者や指定討論者で3ポイント、学会や研修参加で2ポイントなどポイント制になっており、資格の更新には計15ポイントが必要です。研修の種類もいくつかの領域にまたがって参加する必要があります。
臨床心理士には専門家としての自覚と自己研鑽の姿勢が求められているのです。
臨床心理士資格取得により活躍できる場は?
教育、医療、福祉、司法、産業など幅広い分野で活躍!
臨床心理士には教育、医療、福祉、司法、産業など幅広い活躍の場があります。主だった活躍の場としては学校と病院が挙げられるでしょう。学校と病院で働く心理職員の大半は臨床心理士の有資格者のようです。
分野ごとに、代表的な活躍の場の例をまとめてみました。
■ 教育分野
スクールカウンセラーとして、学校内の相談室などで児童生徒の人間関係や生活面、学業、発達などの問題に対しての心理的援助を行います。休み時間に誰でも入れる形式で自由に相談室に来てもらったり、放課後または先生と取り決めた時間で、一対一でじっくり本人と話すこともあります。環境が変わることで問題が大きく改善する場合もあるので、親や教師へのコンサルテーションを行うことも多くあります。
■ 医療・保健分野
精神科・心療内科の病院や診療所(クリニック)、保健所、精神保健福祉センター、リハビリテーションセンターなどで、相談に来た方の心理的援助を行います。個別のカウンセリングや心理検査のほかに、集団のデイケアやグループワークなどの活動を行うこともあります。
■ 福祉分野
児童相談所や障害者作業所、老人福祉施設などで、心理検査によるアセスメントや心理面接、グループワークなどをおこないます。子どもの心身の発達や障害児(者)、高齢者の問題など様々なケースに対応します。
■ 司法・矯正分野
家庭裁判所、刑務所、少年院などで、処遇を決定する際の心理検査や心理面接をはじめとした専門的相談業務を担います。再犯防止教育も期待されます。
■ 労働・産業分野
企業内相談室、公立職業安定所(ハローワーク)、障害者職業センター、地域若者サポートステーションなどで、働く上で悩んでいる方の心理支援や休職・復職のサポートを行ないます。また、企業内ではメンタルヘルスやハラスメントの研修などを行うこともあります。
臨床心理士の年収
300~400万円程度が主流
臨床心理士の就職先としては、医療機関や学校等の教育機関が中心です。年収にして300万円~400万円が一番多いようです。
月収にすると20~22万程度、非常勤の場合だと時給1,000~1,500円程度がスタートが相場です。日本の女性の給与所得者の平均年収は293万円で、臨床心理士の75%は女性ですので、臨床心理士の年収は概ね平均よりは高い水準と言えるでしょう。
詳しくは下記の関連記事で解説しています。
臨床心理士の現状・将来性
公認心理師と臨床心理士
臨床心理士は1988年の認定開始以来、日本の心理臨床の現場を支え続けてきた実績と信頼があります。
2017年に国家資格、公認心理師が誕生しましたが、まだ実績が少ないためか心理職としての採用となると、臨床心理士を取得しているかどうかが問われることが少なくありません。
臨床心理士は、これからも公認心理師とは別の資格として心理職の中で確固たる地位を継続していくのかもしれません。
公認心理師と臨床心理士の違いや今後の見通しについて、詳しくは下記の記事で解説しています。
臨床心理士の資格取得を目指すなら
心理系の通信制大学もおすすめ!
これから臨床心理士の資格取得を目指す方は、大学院にて必要な科目を履修しなければなりません。
大学院に進学する前に大卒資格が必要な方や、院への進学は迷うけど心理学について学んでみたいという方は、心理系の科目を学べる通信制大学がありますので検討してみるといいでしょう。
心理学の基礎を身につけておけば、いざ臨床心理士を目指すために大学院に進学したときも自信をもって学習に臨めるでしょう。
臨床心理士 関連記事一覧
臨床心理士についての関連記事をご紹介します。
臨床心理士の就職先や年収について解説したページや、国家資格・公認心理師の誕生にともない、これから臨床心理士資格がどうなっていくかを推察したページ、認定心理士資格との違いについて解説したページなどがありますので合わせてご参照ください。