はじめに
皆さんは、現在の環境に満足していますか?現在の生活に全ての面で満足しているという人はあまりいないのではないでしょうか。また、以前よりも家にいる時間が増えたことで、欲求不満など感じている人も多いかもしれませんね。
今回は、欲求不満に関連する「マズローの欲求5段階説」についてご紹介します。
人間の欲求には段階がある!?
マズローの欲求5段階説(自己実現理論)
アメリカの心理学者であるマズローは、人間には基本的欲求と成長欲求が備わっているとし、欲求5段階説(自己実現理論)を唱えました。
これは、人間の欲求を5つに分け、1つの欲求が実現されると、さらに上位の欲求が生まれるとするものです。
基本的欲求は以下の4つです。
1、生理的欲求
飢えを満たすための「食べる」、喉の渇きを癒すための「飲む」、また「眠る」「排泄する」など生きるための本能としての欲求です。
2、安全欲求
身の安全と生活の安定を求める欲求です。
3、社会的欲求
自分を受け入れてくれる仲間や集団を求める欲求です。また、愛する人が欲しいなどの欲求なども社会的欲求にあたります。
4、承認欲求
他人から認められたい、尊敬されたいと願う欲求です。
これら4つの基本的欲求は、1~4の順で、1つ満たされるごとに次の欲求へと進みます。
例えば、生理的欲求が満たされると、安心して住める場所を求めたり、安定した職場に就くことを望んだりします。そのあとは、結婚して幸せな家庭を築きたいと思うようになり、最終的には、職場や家庭で信頼されたり、認められたりすることを望むようになります。
これら基本的欲求が満たされると、さらに一歩進んだ段階として、成長欲求である「自己実現欲求」が生まれます。これは、自分の能力をもっと発揮して、可能性を高めたいという欲求です。
この欲求に向かって努力することで、人は人生に手ごたえを感じることができるようになると言われています。
欲求不満はなぜ起きる?
上を目指したいという欲求があるから!
それでは、欲求不満はなぜ起こるのでしょうか。
これは、「さらに上を目指したいという欲求が働いているから」と考えられています。もしかしたら基本的欲求が満たされていない状態なのかもしれないですね。
人間の欲求には際限がないので、何不自由のない生活を送っていても、完全に満足することはなく、また新たな欲求が湧いてくると言われています。
その欲求が自分自身の進歩する原動力ともなるので、欲求不満が起こるのは悪いことではありません。欲求不満を持っている人は、自分の成長に前向きで健全な精神の持ち主だと言えるでしょう。
欲求不満が生まれた時、あなたはどうする?
努力する?あきらめる?
欲求不満が生まれた時、あなたはどうしますか?
無理な欲求だとはなからあきらめてしまう時もあるかもしれませんね。でも、それが積み重なると、「どうせ自分なんか」という気持ちに陥りやすくなり、自己肯定感も下がってしまいます。
反対に、欲求を満たすために努力するということもあるでしょう。
努力すること自体はいいことなのですが、現実離れした目標を置いてしまうと、せっかくの努力が無駄になってしまう可能性が高く、次への原動力が生み出しにくくなります。
欲求不満が生まれた時には、まず自分でも実現できそうな目標を立て、それがクリアできたら、そこから少しずつ高い目標を掲げて努力するようにすると、抱いている不満が意欲へと変わりやすくなります。
欲求不満にも例外がある!?実存的欲求不満とは?
生きる意味を見いだせない欲求不満のこと
欲求不満には例外があると言われています。オーストリアの精神医学者であるヴィクトール・フランクルは、第二次世界大戦時に強制収容所で過ごした経験から、生きる意味を見いだせない欲求不満があることを発見し、これを実存的欲求不満と名付けました。フランクルは、世界的なベストセラーになった「夜と霧」の作者でもあるので、ご存じの方も多いかもしれませんね。
人は、本来自分の人生にどれほどの意味があるのかを見いだそうとする意志に支配されていると言われています。
しかし、実存的欲求不満になると、この意志が失われ、生きる気力をなくすことになりかねません。その場しのぎで毎日を過ごすようになったり、責任から逃れて生きるようになったりします。そして最終的には、無力感に支配されるようになります。
コンプレックスやトラウマなども、実存的欲求不満が密接に関わっていると考えられています。
まとめ
今回は、マズローの欲求5段階説やフランクルの実存的欲求不満についてご紹介しました。
人間には様々な欲求があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
現状に不満を感じている人は、自分の感じている不満が欲求5段階説のどの段階に当てはまるものなのかを考えることで、自分がこれからすべき行動が見えてくるかもしれませんね。
今回のコラムを読んで、心理学に興味を持った方は、気軽に自宅で学べる通信講座もありますので、よかったらチェックしてみてくださいね。
■参考書籍
・渋谷昌三『よくわかる心理学』西東社 1999 P278~279
・渋谷昌三『図解 すぐに使える!心理学』PHP研究所 2013 P26~27
・渋谷昌三『決定版 面白いほどよくわかる!心理学』西東社 2017 P268~269