好意の返報性とは|プロのカウンセラーが心理学用語を解説

好意の返報性とはコラム
コラム
このページの監修者
城川 光子

1985年東京生まれ。私立渋谷幕張高等学校、上智大学文学部、関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻。
公認心理師・臨床心理士・産業カウンセラー試験合格。心療内科クリニックでのカウンセリング、小学校スクールカウンセラーなどの職務経験。

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「返報性」とは?

身近にある「返報性」の例

「あ、この人に年賀状出してないのに来ちゃった!早く返さなきゃ」「バレンタインにお菓子もらったけど、お返し何にしようかな」「お宅に招待してもらったから、ぜひ今度うちにもきてもらわなきゃ」といったこと、誰しも経験があるのではないでしょうか。

人には「返報性(reciprocity)」があると言われており、「人から何かをしてもらったら、何かを返したくなる」という基本的な心理があるのです。これを返報性の原理と言います。

返さないでいると何か借りがあるようで落ち着かないし、もしその規範から外れ、何も返さないようなことがあると、周りから恩知らずや傲慢など否定的なレッテルが貼られるのではないかとヒヤヒヤします。人が人に食べ物・労力・気づかいなどいろいろなものを与え、そしてそれは戻ってくる、このギブアンドテイクの連なりが人の社会を形作っています。

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返報性の原理とは

「返報性の原理」の実験

返報性の原理を端的に示した実験があります。

【デニス・リーガンによる実験】
大学教授のデニス・リーガンは、2人の被験者に「美術鑑賞」という名目で実験に参加してもらい、絵画の評価をしてもらいました。

そのうち1人は実は仕掛け人で、短い休憩時間の間に頼まれてもいないコーラを2本買ってきて、そのうちの1本を被験者に渡すのです。そして絵画の評価が終わって、仕掛け人から「1枚25セントのクジを買ってくれないか」とせがまれる…するとコーラをもらっていた被験者の方が、もらっていない人たちより2倍ものクジを購入したのです。

人はもらった恩を、どうしても返したくなってしまうのですね。

さらにそれは仕掛け人のことを好きか嫌いかは関係なく、コーラをもらって親切にされた被験者はその申し出に応じました相手への好き嫌いを超えて、返報性の原理が働くのですね。

相手への好き嫌いを超えて働く「返報性の原理」

どんなに嫌いでも、お返しだけはするという例があります。

【ある宗教団体の例】
ある宗教団体が路上で寄付を集めても全然もらえないので、花を無理矢理に通行人に渡し、そして寄付をお願いするようにしたらかなりの確率でお金を渡してもらえました。あるビジネスマンは本当に嫌そうな顔で、何度も花を断りましたが、あまりにしつこいので最後には花を受け取り、小銭を渡してしまいました。

相手を好きか嫌いかを超えて働く返報性の原理、なかなか強力ですね。

セールスに働く「返報性の原理」

もしセールスなどで試供品やサンプル、「〜日間返品無料」、「無料お試し期間」、そういったものがあった時は、要注意です。何かをもらったり、一度使ってしまうと、返報性の原理が働くため、後に断ることが難しくなります

私の例ですが、夫の誕生日プレゼントを探しにお店を回っていたのですが、あるお店では私にヨーロッパの見たことない天然水を、5歳の息子にはオーガニックのオレンジジュースをくれ、さらにお店を動き回る息子に1人店員さんがついてくれて、一緒にニコニコと遊んでくれました。ここまでくると何も買わないわけにはいかなくなって、気づいたら予算オーバーのポロシャツを買っていました。冷静に考えればもらったのはただの飲み物なのですが、先に色々もらってしまうと、商品を買うなど何らかの形で返そうとしてしまうのでした。

対策としては、その原理を知っておいて、最初から貰わないようにする、もしくはもらってしまっても「これはセールスだ」「返報性の原理だ」と気づくことができれば、うまく断ることができるかもしれませんし、本当に必要かどうか自分でもう一度考えることができるかもしれません。

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ドア・イン・ザ・フェイス

返報性の原理を利用した「ドア・イン・ザ・フェイス」

さらに返報性の原理を利用したドア・イン・ザ・フェイスと呼ばれるものがあります。大きい頼みごとから小さな頼みごとに要求を引き下げると、イエスと言いやすいのです。

なぜかというと、頼みごとをされた相手は要求を下げてくれた、譲ってくれたと感じ、それに応えたい、応えなければと返報性が働き、イエスと言ってしまうのだそうです。

「ドア・イン・ザ・フェイス」の実験

【チャルディーニによる実験】
社会学者のチャルディーニの実験では、大学生に「非行少年の動物園遠足の引率をしてほしい」と頼むのですが、それだけだとたった17%の学生しか受け入れてくれませんでした。しかし最初に「2年間、週に2時間、非行少年のカウンセリングをしてほしい」と無茶なお願いをし、もちろんそれは全員断るのですが、その後に例の遠足の引率の依頼をすると、なんと半数以上もの学生がOKしたのです。

普段なら断ってしまうようなお願いでも、難しいお願いをされた後だと受け入れてしまうのですね。

日常生活でも少し難しそうなお願いをしたい時に、使ってみるのもいいかもしれません。なお注意点としては最初のお願いはあまりにも突拍子も無いものだと怪しまれてしまって、うまくいかなくなるそうなので、ほどほどに現実感のあるお願いにしてみましょう。

セールスと「ドア・イン・ザ・フェイス」

セールスでも最初に一番高いものを勧められてからだと、次にそれより安いものだったら少し予算オーバーでも買ってしまうことがあるようで、セールスはまず高くて良いものを見せるのが鉄則なのだそうです。対策としては予算を元々決めておいて、最初に高いものを見せられてもそこから比較せず、最初の予算に合わせたものを選べる賢さを身につけたいですね。

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好意の返報性とは

好意に好意で返そうとするのが「好意の返報性

さて「○○さんがあなたのこと好きらしいよ」「○○くんがあなたのこと気になってるって言ってたよ」と言われたら誰しもドキっとするのでは無いでしょうか。もちろん最初から嫌いな相手では難しいのですが、ある程度普通に接していて、感じ良く思っている関係性であれば、好意の返報性が働いて、自分に向かってきた好意に対して好意で返そうとするのです。

【カーティスとミラーの実験】
カーティスとミラーの実験では、一部の参加者には相手から好かれていると信じこませ、残りの参加者にはその同じ相手から嫌われていると信じ込ませました。

その後のやりとりでは、好かれていると思っている人たちは感じよく振る舞い、自分のことをよく打ち明け、相手に対して否定をせずにあたたかく接し、実際に相手からも好かれる結果になりました。一方で嫌われていると信じた人たちはよそよそしく感じ悪く振る舞い、実際に相手からも嫌われました。

人に好かれることによって、好意は大きくなるのですね。

この例は好意を他の人から伝え聞いた形ですが、もちろん直接伝えてもいいのです。相手に好意を伝えれば、自分も好意で返したくなるのが好意の返報性の心理です。いきなり告白ではなくても、例えば服装や髪型を褒める、お土産やちょっとしたプレゼントを渡すなど、好意をいろんな形で伝えることで、相手も徐々に自分のことが気になってくる…なんてことが起こるかもしれません。

自分に自信がない時ほど「好意の返報性」が働きやすい

ちなみに不安な時自分に自信がない時ほど、自分を好いてくれる人への好意が大きくなります

【ウォルスターによる実験】
ウォルスターの実験では、女子大学生が性格検査の結果を待っていると、そこにハンサムな男子学生がやってきて、好意を持っていることを伝えられ、デートの約束を取り付け始めます。

そこに実験者がやってきて、女子大学生は部屋に入り性格検査の結果を聞きますが、性格検査が一時的に自尊心を下げるような悪い結果を聞かされた女子大生たちの方が、例の男子学生に対する好意が大きくなりました。

恋人との別れ際に別の人に相談していたら、いつの間にかその人のことが好きになってしまった…というのはこういうことだったのですね。自分に自信がなくなっている時は、自分によくしてくれる人に惹かれやすいようなので、本当に良い人か見極められるといいですね。逆に、気になっている人が落ち込んでいる時は、自分の株を上げるチャンスとも言えるのかもしれません。

ただ、先にも少し書きましたが、好意の返報性が働くのは、元々あまり嫌悪感を抱いておらず、相手の良いところも見えているような関係性であることが前提です。元から生理的に受け付けない、全然タイプが違うので受け入れられないなど相手が思っていたら、どれだけ積極的にアプローチしても余計に嫌悪感を生んでしまって距離ができてしまうかもしれません。

また何か別のことに夢中になっていたり、仕事で忙しくてそれどこじゃないという時にも、あまりうまくいかないかもしれませんね。あくまで、フラットな関係が築けていて、お互いちょっと余裕のある時期に、少しだけ近づける可能性を高めてくれるのが好意の返報性かもしれません。

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まとめ

人には何かされたら何かを返したくなる返報性の原理があります。情けは人のためならずという言葉がありますが、人に何かをしてあげると、返ってくるようになっているのですね。それが純粋な思いやりであるうちはとても美しいやりとりだと思いますが、あまりやりすぎると「お返ししなきゃ、面倒だな」とだんだん義務感になってしまうこともあるので、ほどほどの加減にしましょう。

セールスでは、相手のことが好きでも嫌いでも、してくれたことには返そうとしてしまうので、返報性が働いていることを見破って、本当に必要なものが買えるといいですね。明確に興味がない時は、最初からサンプルをもらわないなど、関わらないことも一つの選択肢かもしれません。

人間関係でも好意の返報性を活かして、気になる相手との距離をちょっとだけ近づけることができるといいですね。恋愛だけでなく、ビジネスでも取引先に手土産を持って行ったり、相手のことを褒めたりして、スムーズな関係作りにつながるのではないでしょうか。友人やパートナーとも、ちょっとしたプレゼントや季節の挨拶を通して、お互いに良い関係を続けていきたいものです。

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