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現代人が陥りやすい学習性無力感とは

更新日: 2018/07/10

現代人の多くが学習性無力感の問題に直面している?!

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学習性無力感という言葉、ここ近年ではメディアでも頻繁に取り上げられるようになってきましたね。一度は耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。学習性無力感とは、簡単に説明すると、長期間にわたってストレスの回避困難な環境に置かれた人や動物は、その状況から逃れようとする努力すらも行わなくなるという現象を指しています。他にも、「学習性絶望感」「学習性無気力」と言われる場合もあります。

一般的に私たち人間や動物は、何かストレスがかかってしまう状態だと、その状況をどうにかして解決しようとするものです。しかし、自分の努力によって状況を変化させることができないと感じた場合、無力感が学習されてしまって、状況を変化させる気力が持てなかったり、または逃げ出す気力さえも起こらなくなってしまうのです。

この学習性無力感は、アメリカの心理学者であるマーティン・セグリンが1960年代に発表した心理学理論です。その実証実験として、とても有名なのが犬と電流の実験です。この実験は犬を電流が流れる床のある部屋に入れて、どうやっても回避できない電気刺激を与え続ける、というものです。少々酷なような感じもしますが、電気刺激を絶対に避けることができない状況に陥った犬は、あきらめの感覚が生じてしまい、やがては回避することもなく、ずっと床にうずくまったままの状態に陥ったそうです。その後、電気刺激を避けられる状況に変えてみたところ、犬はそれでも動くことなく、うずくまったままで変化が見られなかったのです。この実験からも解るように、長い間回避できないストレスにさらされることによって、どうせ何をやっても無駄なことだという無力感が学習されてしまうのです。例え環境が変化したとしても、「何をやっても無駄なこと」という無力感に陥っているので、行動を起こさなくなってしまいます。

また、同じような実験は様々な動物や魚類のカマスなどで試されてきたようですが、やはりどの生き物も同じような結果になったそうです。また人間への実験も、別の心理学者が大学生を対象に行ったところ、やはり無気力を学習するということが実証されたそうです。

そして昨今の日本では、引きこもりやニートなどの問題がメディアでも多く取り上げられるようになってきましたが、学習性無力感が関係しているとも言われています。では人は、一体どのような時に学習性無力感に陥ってしまうのか、いくつか考えてみたいと思います。

「何をやっても無駄なこと」そんな無力感を抱くときとは

ひと昔前のバブル時代の頃などは、「うちの会社に就職しませんか?」等とオファーが何社も来る状態だったと聞いたことがあります。しかしバブル崩壊後、何社面接を受けても受けても内定がもらえずに、どこにも就職できない人が増加した就職氷河期に突入してしまいました。一説によると、引きこもりやニートが増加したのは、「何をやっても就職できない」と意欲を失い、学習性無力感に陥ってしまった人が増えたのが原因だと言われています。どうせ何社受けても内定をもらえない、どう努力しても落とされてしまう、という無力感を学習した結果、努力ができない状況になって引きこもりやニートになってしまったという訳です。

実際のカウンセリングの現場でも、学習性無力感に陥っている人のお話しを伺うこともあります。上と同じように、

「何社面接を受けても就職先が見つからず、自分は駄目な人間だと感じている」

など、特に珍しいことではありません。 他にも、職場の上司が部下の提案を幾度となく却下し続けた場合。部下は「どうせ何を言っても無駄だ」という無力感を学習してしまいます。例え上司が違う人に変わったとしても、何を言っても無駄と学習してしまっている無力感は継続されていて、仕事自体を続けることも困難に感じてしまうようです。 他にも、何度もプロジェクトを失敗させてしまい、上司に何度も叱責されていたとします。すると「どうせ何をしても失敗する」と無力感を学習してしまい、ついには何もできない状態になってしまうこともあるようです。

家庭内で言えば、親がとても過干渉な場合。子どもが、「あれをしたい、これをしたい」と親に言ったとしても、親は却下し続けたり、「これをしときなさい。」と違うものを押し付けます。すると子どもは「何を言っても無理」と無力感を学習し、自発的には何もしなくなります。しかし、一見何でも親の言うことを真面目に聞く良い子に見える場合もあるでしょう。内心はストレスが溜まりに溜まっているので、親のいない学校で荒れてしまったり、思春期に入る頃にいきなり爆発してしまったり、予想外の形で溜まったストレスが噴出してしまう場合もあるのです。 また、家庭内での虐待やDV、パワーハラスメントも同様で、どうやっても回避できない・逃げられないと無力感を学習すると、暴力や精神的ダメージを与えられているにも関わらず、抵抗せずにその状況を受け入れてしまう、という場合もあるようです。

また、長期間ストレスにさらされ、学習性無力感に陥っている場合だと、精神疾患を引き起こす可能性もあります。現代人に多いウツ病など、長い間心の病と闘わなければならない状態になってしまうこともあるようです。 第三者から学習性無力感に陥っている人を見ると、

「ただ怠けているだけだ」
「本人の努力が足りないからだ」


と見えてしまうこともあるようですが、当の本人は

「自分に原因がある」
「自分が悪いからこうなってしまった」


等、強く自責の念に苛まれている場合もあるので、追い詰めないためにも叱責する等、しない配慮も必要かもしれません。

学習性無力感から脱するためには

学習性無力感に陥ってしまった状態から抜け出すためには、小さな成功体験の積み重ねが必須かもしれません。どんな小さな成功体験でも、積み重ねていくことができると、

「自分でもやればできるんじゃないか」

という自信に繋がっていきます。 本当に辛いときは、何もやる気もでないし動けない状態になることと思います。そんな中、日々タスクを作って、

・洗剤を買う
・プレゼンの資料をつくる
・デスクの上を整理する


など、できそうな目標設定を掲げます。あくまで、できそうな目標にすることがポイントで、難しい目標を掲げてしまうと、また「やっぱりできなかった」と無力感に苛まれてしまう可能性もあるので注意が必要です。どんな小さな目標でも良いので、できそうな目標を掲げ、それをクリアしていくことにより小さな自信が芽生えてくることでしょう。またそれを記録として残し、自信が失くなったときに読み返すことができるとベストです。

また日本人は、真面目で勤勉な性格の人が多いと言われています。そのためか、何か失敗をすると、人のせいにはせずに何でもかんでも「自分が駄目だからこうなってしまった」と自分を責める人が多いのが実際です。すぐ人のせいにして責任転嫁をしてしまうのも問題ですが、一度立ち止まってみて、本当に自分だけの責任で失敗が生じたのか考えてみても良いかもしれません。失敗した要因として、環境だったり、それに関わっていた他人だったり、様々な要因があるはずです。「自分が駄目だから失敗した」という気持ちが続くと、学習性無力感に陥ってしまう可能性も高くなってしまうので、心身の健康のためにも自責の念に捉われない考え方を身につけた方が良いでしょう。