短期記憶を長期記憶に変えるには?

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はじめに

皆さんは、学生時代、試験前日に一夜漬けで勉強をした経験はありませんか?実はこの一夜漬けの勉強、あまり効果がないことが分かっています。今回は、人間の記憶についてご紹介していきましょう

一夜漬けで暗記できるのはどれくらい?

一夜漬けで暗記できるのは、全体の2~3割くらい

試験の前日に一生懸命勉強しても、人は一晩たつと、その内容を大半は忘れてしまうと言われています。覚えていられるのは全体の2~3割ほどです。仮に試験までは覚えられていても、そのあとはすぐに忘れてしまいます。

記憶とは、ある対象を脳に認識させる行為を言います。また、この対象を脳に認識させることを符号化と呼びます。何かを思い出す時、人は頭の中で蓄えられた記憶を検索し始めます。

例えば、試験の解答を一字違いで間違えてしまったという場合、その原因は符号化する時点で間違っているか、記憶を蓄える過程で記憶が変形したかのどちらかでしょう。

また、喉まで出かかっているのに対象を思い出せないという場合は、記憶の検索に失敗したということになります。

人間の記憶には大きく分けて3つのパターンがある!

人間の記憶は大きく分けて3つに分かれます。

感覚記憶

1つ目は感覚記憶と呼ばれるもので、街中ですれ違う人のような、その場で認識していたとしても一瞬で忘れてしまうような類の記憶のことを言います。

しかし、ここでパターン認識が行われ、「意味がある」と認識された場合は、短期記憶へと移行されます。パターン認識とは、記憶の中にあるパターンに結びつけて意味のある情報を選び出す知覚処理のこと。

例えば、視覚情報の場合は、目に映った映像の中から、「これは”あ”という文字だ」とか

「あの顔は◯◯さんだ」と、記憶の中にパターンとして結びつけて、意味のある情報を選び出します。

短期記憶

2つ目が短期記憶です。短期記憶は感覚記憶よりも確かな記憶ですが、量的にも時間的にも限界があります。具体的には10秒程度の短い記憶で、数字なら7桁前後くらいまでのものを言います。

例えば、メモに書かれた電話番号を見た直後は、何も見ないで電話をかけられるのに、何もしないとすぐ忘れてしまう、これが短期記憶です。

長期記憶

3つ目が長期記憶で、一度覚えたらまず忘れることはない記憶のことを言います。一般的に「記憶」と呼ばれるのはこの段階にまで進んだもののことを指します。

長期記憶には、短期記憶のような量的な制限はなく、時間的にも半永久的に残ると言われています。しかし、長期記憶として残されていたとしても、時にどうしても思い出せないことがあります。これがいわゆる「ど忘れ」です。

短期記憶を長期記憶に変えるには?

繰り返し覚えるしかない!

それでは、短期記憶を長期記憶に変えるにはどうしたら良いのでしょうか。

これは、地道ではありますが何度も繰り返し覚えるしかありません

心理学用語では、繰り返し暗記することをリハーサルと言います。紙に繰り返し記憶したいことを書いたり、何度も口に出したりすることでリハーサル効果が強化され、短期記憶から長期記憶の段階に記憶を持っていくことができます。

また、私たちはインパクトのある出来事はいつまでも覚えておくことができます。例えば、日本史の年号を覚えている時に台風が起こると、その台風が起きたという出来事と年号とがセットになって記憶として残ります。これをフラッシュバルブと言います。

ですので、何かどうしても記憶しておきたいことがある場合は、印象に残る出来事とセットで覚えるようにすると、記憶にきちんと残すことができます。ただし、印象に残る出来事が都合よく起こることは少ないと思うので、大変でも繰り返し覚えるのが一番の近道です。

記憶している内容を、1ヶ月以内2回以上反復することで長期記憶になることがよくあるとも言われています。

記憶力は高められる?

「感動」を伴う体験をすれば高めることが可能!

それでは、記憶力そのものを高めることは可能なのでしょうか?

答えはYESです。

ポイントは、感動を伴った体験をするということ。学生時代、先生の教え方がおもしろかった、また先生のことが好きだったという理由で嫌いだった科目や興味のなかった科目を楽しむことができるようになり成績があがったという人も少なくないのではないのでしょうか。

これは、覚えなくてはならない対象に、先生の教え方がおもしろい、好きな先生に教わるといった感動(感情)が加わることで、結果として記憶の定着度が高まったからだと言えるでしょう。

まとめ

今回は記憶についてご紹介してきました。一般的に年をとると、物忘れが多くなると言われています。実際、脳の細胞は年とともに減り続け、増えることはありません。でも、細胞同士を結ぶネットワークは年をとっても増やすことができると言われています。そのためには、能動的に動いて、新しい刺激を脳へ送り込むことが大切です。

今回ご紹介した「記憶」は、心理学では認知心理学の分野にあたります。

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■参考書籍
・図解 すぐに使える!心理学 渋谷昌三 PHP研究所 2013 P66~67
・決定版 面白いほどよくわかる!心理学 渋谷昌三 西東社 2017 P238~243
・よくわかる心理学 渋谷昌三 西東社 1999  P34~36

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