介護の現場でも役に立つ、心理学の知識

介護の現場でも役に立つ、心理学コラム一覧
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人の心の動きを理解する

元介護職員の畑中です。私は大学で心理学を専攻し、その後介護福祉施設で働いた経験があります。介護の現場で、勉強していた心理学が役に立ったので、いくつか紹介したいと思います。

介護職には、専門知識や技術が当然不可欠ですが、心理学を用いると肉眼では見えない人の「こころ」を測定することができます。実践すれば仕事はもちろん、職場の同僚、配偶者との関係にも役立ちますよ。

心理学とは、「人の心の動きを理解するための方法」を探る学問です。「心理学を学べば、人の心を読めるようになる!!」と考える人が多いのですが、実は少し違います。例えば、コミュニケーションが取れない人に対して、「性格がよくないから」「病気だから」と考えてしまいがちですが、これでは何も変わりません。そのため相手ではなく、自分を変えようとすることが大切。「いったい自分の何が、相手に嫌な態度を取らせているのか」考えるようにしましょう。

高齢者の心理とは?

まずは、高齢者がどのような心理なのか、説明します。

発達心理学において、「生涯、人は発達し続ける」とされています。発達心理学者「エリクソン」によると、課題の内容は年齢によって変わります。

60歳以降の高齢者の課題は、「絶望」と「統合」。
どういうことなのか、次から詳しくしていきます。

【高齢者の課題①:絶望】
60歳以降は、年齢と環境の変化から、2つの「絶望」に陥りやすいと言われています。

・社会からの孤立からくる絶望
・病気、体の衰えからくる絶望

高齢者は、子どもの自立、配偶者との死別を経験します。職場から引退するため、経済力も低下。「社会や周りの人から見放されるのではないか」という感情が強くなり、生きる気力を失ってしまうことも。

また、体を壊しやすく、死への恐怖が今までよりも強くなります。そのため、精神状態が不安定になることが多いのです。
ひどくなると、攻撃的なことばが増えたり、わがままになることも。「自分はどうせできないのだから」と、誰かに頼ることが当たり前になってしまいます。

ただし、個人差も大きくあります。人によっては、年をとると感情が落ち着いて、穏やかになることも。一方で、一度悲しみや不信感を覚えると、いつまでも抜け出せなくなります。

【高齢者の発達課題②:統合】
2つ目の高齢者の発達課題は、統合です。
統合とは、今までの人生を見直して、新たな目的を見つけること。
高齢者の場合、「絶望」を受け入れて、「死」を迎え入れることが大切になります。

しかし、1人で新たな目的を見つけるのは難しいもの。そこで、介護職は、「統合」するためのお手伝いをするのが望ましいとされています。
例えば、高齢者が生きてきた時代や、人生を肯定すること。それだけで、高齢者も「自分」という存在を認めることができます。

高齢者に対して役に立つ心理学の知識

ここでは、介護の現場でも使える、心理学の知識をご紹介します。

【単純接触効果で、信頼されやすくなる】
単純接触効果は、介護の現場で役に立ちます。

単純接触効果とは、何度もターゲットに接触して、親しみを持たれやすくすること。
何度も相手と顔を合わせることで、相手の潜在意識にある「親しみのあるもの」と重ね合わせます。

例えば、テレビのCMに多く出てくる女優や俳優は、自然と好感を持つようになるもの。一方、あまりCMに出てこない芸能人は、記憶にも残りません。

介護の現場で、「あまり親しみを持てないな」と感じてしまう利用者には、あえて何度も接触してみましょう。
コミュニケーションの回数を増やすことで、利用者はあなたのことを信頼しやすくなります。

【「正の強化」で、好ましい行動を増やす】
正の強化では、高齢者の好ましい行動を増やすことができます。

正の強化とは、「ある環境の中で起こした自分の行動の後に、何かうれしいことがあると、その行動が増えて行く」というもの。

例えば、普段はおとなしいのに、自分を見てもらえていないと感じたとき、大声で叫んでしまう高齢者がいたとしましょう。

この場合、高齢者にとってうれしいことは、自分に興味を持ってもらうことです。

少しでも長く、おとなしくいてもらうためには、おとなしいときに、たくさん声をかけると効果的。「おとなしい状態の方が、自分を見てもらえる」と高齢者が認識するようになれば、自然とおとなしい状態が長くなります。

逆に、叫んでいるときに声をかけると、「叫んだら、自分を見てくれる」と思ってしまいます。大声を上げる回数を増やしてしまうので、気をつけましょう。

仕事で役に立つ心理学の知識

次に、仕事の同僚や部下、上司に対しても使える心理学について紹介します。

【バーナム効果】
バーナム効果を利用すると、部下のやる気を生み出します。

バーナム効果とは、誰にでも当てはまる言葉でも、「自分にぴったりの言葉だ」と信じてしまう心理のこと。

例えば、部下に「あなたは、いつも言葉使いがきれいだね」と言ってみましょう。
本来、部下が上司に対して、敬語を使うのは当たり前。しかし、前向きな評価を伝えることで、「私は言葉使いがきれいなんだ!もっときれいな言葉を使えるように、がんばろう!」と部下のやる気を引き出せます。逆に、マイナスな評価を告げると、「そんな訳あるか!!」と反発心を生むことも。バーナム効果はなくなるため、注意しましょう。

【フットインザドア・テクニック】
フットインザドア・テクニックを使うと、断られそうな依頼も受けてもらいやすくなります。

フットインザドア・テクニックとは、最初に簡単な要求を受け入れてもらうと、難しい要求も受け入れてもらいやすくなる、というもの。

例えば、部下に「新しいレクリエーションを考えてほしい」と頼みたくなったとします。 まずは、「1年前は、どんなレクリエーションをやっていたか、記録を見て調べてもらえる?」と頼んでみましょう。 記録を調べるだけなので、そんなに難しい作業ではありません。

次に本来の依頼である「新しいレクリエーションを考えてほしい」と頼めば、高確率で受けてもらえます。

フットインザドア・テクニックは、上司にも部下にも使えますよ。

まとめ

介護の現場で心理学の知識が使えることがおわかりいただけたでしょうか。もっと詳しく心理学を学びたい場合、心理カウンセラーの講座を受講するのも手です。プロのカウンセラーを目指す本格的なものだと介護職と並行しては難しいかもしれませんが、通信講座で比較的簡単に取得できる資格もあります。付け焼き刃の知識ではなく理論からしっかり学ぶことで、色んなケースに対応できるようになっていきます。介護職で心理カウンセラーの資格を持っている人は非常に少ないので、自分の強みにできるかもしれません。

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