プラシーボ効果とは?
思い込みが身体に良い影響を及ぼす効果
心理現象の一つに「プラシーボ効果」というものがあります。
多分、テレビや雑誌などでこの言葉を目にした人は多いのではないでしょうか。とても有名な心理現象の一つです。
プラシーボ効果を簡単に説明すると、自分の思い込みが身体に良い影響を及ぼすことを指しています。日本では「偽薬効果」と呼ぶこともあるようです。
プラシーボとは、薬効のない成分である薬を本物の薬として信じ込ませ服用させることにより、本人の症状が回復傾向になったり、治ったりすることを言います。
プラシーボ効果はプラセボ効果とも言います。
プラシーボ効果の実証実験例
このプラシーボ効果、1955年にヘンリー・ビーチャーが研究報告をし、広く知られるようになりました。その後も様々な心理学者が実証実験を繰り返し、思い込みによって成果が上がったり、症状が回復することを実証しています。
しかし一方では、疑問視する意見もでており、治療手段として偽薬の効果は限られている、という報告もあります。
現在でもプラシーボ効果については、様々な研究が進められているようです。
プラシーボ効果の実証実験として有名な例は、患者に対して「これは鎮痛剤です」と伝え服用させるが、実際は薬効のない薬を処方したところ、およそ3割の患者に改善傾向がみられたという報告があります。
また、ある医療機関では、患者を手術室に運んだだけで実際には手術しないにも関わらず、手術を受けたと思い込んでいる患者の怪我は、回復傾向を見せたそうです。
ライト氏のガン治療に見るプラシーボ効果
以下に記すのは、ロールシャッハテストという正式な心理テストを専門とするクロッパー氏が1957年に「Journal of Projective Techniques」で報告した事例です。
ライトという名の患者は悪性リンパ腫にかかっており、医師が触れて簡単にわかるほど大きな腫瘍が全身にできていた。
その当時、ある医師グループがクレビオゼンという癌に対する新薬の化学処方を研究していた。ライトの癌はかなり進行していたが、医師は彼にも与えることにした。そこで奇跡が起きた。ライトは体重が増え、はた目にも良くなり、腫瘍そのものも急激に縮小して触れてもほとんど判らなくなった。
しかし、新聞が「クレビオゼンは期待されたほどの大発見ではない」と否定的に報じるやいなや、ライトはすっかり意気消沈し、体重も減り、腫瘍はまた大きくなった。
医師たちは、投薬に対するライトの反応には暗示の力が大きく影響していると考えた。そこで、医師たちはライトに、「前回この病院に届けられたクレビオゼンは比較的効果の弱いものだった。研究所は問題点を改善し、もうじきもっと強力な新薬を送ってくる」と告げた。そうやってライトの希望をかきたてておいて、新しい薬がついに届いたと告げ、ライトに注射した。
ただし、その中身は無菌水であった。ただの水を注射されただけなのに、ライトは前回と同じく、劇的な回復をとげた。回復は続いたが、またしても新聞が「米国医師会は、クレビオゼンが癌にまったく効かないと報告した」と報じると、ライトは再び衰弱し始め、腫瘍は巨大化し、その後まもなく亡くなった。
このように、思い込みの影響力というのは大変強いものだと言えるでしょう。また、「病は気から」という言葉がありますが、まさにそうで、思い込み次第で病の症状も変化する傾向にあると言えるかもしれません。
プラシーボ効果の逆は?
身体に悪い影響を及ぼすノーシーボ効果
また、プラシーボ効果とは別に「ノーシーボ効果」「ノセボ効果」というものもあります。
簡単に説明すると、プラシーボ効果とは逆で、自分の思い込みが身体に悪い影響を及ぼすことを指します。
「この薬は副作用がでます」と患者に伝えて服用させるが、実際には薬効のない薬を処方したところ、本当に吐き気などの副作用がでてしまう、といったようなことがあったそうです。
反対に、実際に効果のある薬剤投与をしていても、患者側が「この薬は効かない」と思い込んでいると、薬剤の効果がなくなってしまうとも言われています。
例えばジェネリック医薬品などの安い薬を服用する際、「安いから効果も少ないだろう」と思って服用すると効果が薄くなるといった例があります。
ハーバート・スピーゲルによるやけどの実験
以下に記すのは、ニューヨークのコロンビア大学でハーバート・スピーゲルが実験したものです。
国陸軍のある伍長を被験者にした。彼は、この伍長に催眠術をかけて催眠状態にしたうえで、その額にアイロンで触れる、と宣言した。
しかし、実際には、アイロンのかわりに鉛筆の先端で、この伍長の額に触れただけだった。その瞬間、伍長は、「熱い!」と叫んだ。そして、その額には、みるみるうちに火ぶくれができ、かさぶたができた。
数日後にそのかさぶたは取れ、やけどは治った。
この実験は、その後四回くり返され、いつもまったく同じ結果が得られた。
プラシーボの逆はマイナシーボではない
プラシーボの「プラ」はプラスの「プラ」ではありません。
プラシーボという言葉は、ラテン語であるplacebo(プラケーボー)からきています。「私を喜ばせる」という意味をもった言葉に由来したもので、英語のplease(プリーズ)と同じ語源です。
そのため、プラシーボの逆は「マイナス」から取ったマイナシーボではなく、ノーシーボが正しいということになります。
プラシーボ効果を仕事に活かす具体例
プラシーボ効果を意識して仕事に活かすことで、モチベーションアップに使うことや、人の潜在的な能力を引き出すことにも役立ちます。
自分のモチベーションを上げる
仕事では「成功の思い込み」も大切です。 もしも、仕事でプレゼンがあってどうしても成功したい、認められたいと思っている場合は、
「自分だったら絶対に成功する」
と思い込むだけで、プラシーボ効果が発揮されて本当に成功する、といったようなこともあるようです。
しかし、自信が持てない中で「自分だったら成功する」と思い込むことは、難しいと感じる人もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな場合は、偉人でも、実際に成功している人でも、自分の憧れの存在の人でも誰でも構わないので、「こうすれは必ず成功する」という、成功者がやっていたことを真似ると良いかもしれません。「これは成功者がやっていたルーティンだから、これをやれば上手くいくはずだ」という思い込みによって、プラシーボ効果が発揮され、気持ちも前向きになり、仕事での成功が結果として現れるようになる可能性もあります。
部下のモチベーションをアップさせる
また、部下に対してプラシーボ効果を意識して使うと良いでしょう。
「君ならきっとできるよ。君は力があるよ。」
など、前向きな言葉を部下に投げかけることにより、プラシーボ効果が発揮されて、部下も「自分ならできる!」と思い込み、前向きに仕事に取り組むようになる可能性が高いでしょう。
この例で言うと、とある野球チームの話しがあります。
そのチームは毎年成績が振るわず、いつも最下位争いをしているようなチームだったのですが、新しい監督が就任することになりました。その監督は就任時に「君たちなら必ずできる」と言ったそうです。そうして選手の闘志に火を燃やし、本当に優勝してしまった…という話しがあります。
これも、プラシーボ効果が発揮されているのではないでしょうか。
もし、仕事で部下の士気を上げたい場合、部署の成績を伸ばしたい場合は、「できる」という思い込みを持たせてあげるのも、上司の役目なのかもしれませんね。
プラシーボ効果を恋愛に活かす具体例
恋愛にもプラシーボ効果が発揮されると、良いことが沢山あります。
パートナーを良い人に変える
例えば、いわゆる世間一般で言う「ダメ男」に恋をしたとします。
お金使いが荒い、自己中心的、毎日深夜まで飲み歩いていて彼女を放ったらかし、などダメ男の定義は様々ですが、精神が自立している女性ほど恋愛ではダメ男を好きになってしまう傾向があります。
そんな彼を変えるために、意識してプラシーボ効果を使ってみてはいかがでしょうか。毎日彼を褒め、
「あなたはとても思いやりがある人だ」
「あなたはとても優しいね」
など、彼を承認する言葉を沢山投げかけます。
これを毎日続けることにより、彼自身も「自分は思いやりがあって優しい人間」と思い込むようになります。すると、本当に思いやりのある優しい男性になっていき、ダメ男から脱却する…といったようなこともあるようです。
これはラベリング効果とも似ていますが、毎日投げかける言葉によって思い込む力(プラシーボ効果)が作用し、彼が変化していくのです。
自分をキレイにする
また、やはり女性だと尚更ですが、「もっとキレイになりたい」「美しくなって素敵なパートナーが欲しい」と思う人もいらっしゃるでしょう。だからこそ、基礎化粧品にお金をかけたり、エステなどに通ったりしますよね。もっと美しくなるためにプラシーボ効果を意識して使うとすると、
「この化粧品を使うことで私はどんどん美しくなる」
「エステに通うことで更にキレイになる」
と自己暗示をかけてみましょう。
するとプラシーボ効果が発揮され、本当に更に美しく、キレイになっていき、自分に自信が持てるようになって、婚活でも積極的にアプローチができ理想のパートナーをゲットできるようになるかもしれません。
プラシーボ効果を勉強に活かす具体例
「できる」と思い込む
プラシーボ効果で勉強を効率的に進めるコツは「自分は勉強ができる」と思い込むことです。
逆に「自分は勉強が苦手だ」「できない」と思ってしまうと、ノーシーボ効果によって、落ち着いてやれば実際は解ける問題でも解けなくなってしまいます。
しかし、勉強に自信が持てないうちから「できる」と信じるのは難しいですよね。
その場合は、まずは簡単な問題から始めたり、テキストを見ながら問題を解くなどして「できた」という成功体験を積んでいきましょう。
そうすることで自信が付き、難しい問題に出会っても「自分はできる」と思い込むことができ、本来の力を発揮することができます。
環境を整える
勉強が苦手な方の中には、机に座っても集中力が続かない、ついスマホをいじってしまうという方も多いと思います。
それは、幼少のころから机=(宿題・勉強など)やりたくないことをやる場所といった刷り込みがノーシーボ効果として表れているからです。
ノーシーボ効果を払拭するためには、勉強する環境を変えてみましょう。
アロマを焚いてみる、音楽を聴きながら勉強してみる、いっそ別の場所で勉強するなどして、「この環境なら自分は集中して勉強できる」と思い込むのです。
置かれた場所で勉強が捗るのだと、自分自身をごまかすことでプラシーボ効果が発揮され成果が出るはずです。
思い込みの力はとても偉大です。是非、前向きな思い込みを作って、自分自身を高めていくことにトライしてはいかがでしょうか。
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