困っている人がいるのに見て見ぬふりをしてしまうワケは?

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あなたは、誰かが困っているのを見たら声をかけることができますか?

「困っている他者に対して、手を差し伸べる行動」を援助行動と言います。援助行動は誰しもが持っている意識だと言われていますが、この援助行動、時と場合によっては起こりにくいことがあります。

今回は、困っている人がいるのに見て見ぬふりをしてしまう理由について考えていきましょう。

援助行動について研究されることになったきっかけは?

キティ・ジェノヴィーズ事件

援助行動について研究されるようになったきっかけは、1964年にニューヨークで起きたキティ・ジェノヴィーズ事件と呼ばれる殺人事件です。

深夜、自宅アパート前で、キティ・ジェノヴィーズという若い女性が変質者に襲われました。彼女が殺されるまでは30分以上もあり、その間に確認された目撃者は少なくとも38人いました。

しかし、助けに行った人はもちろん、警察に通報した人すら一人もいなかったということで、この事件は物議をかもしました。

周りに人がいると援助行動は起こりにくい

そこで、この事件に関心を持った心理学者ラタネとダーリーは、援助行動に関する実験を行いました。その実験は、被験者に「病人」と偽った人とマイクロホンを通して話してもらい、その最中に発作の演技をさせた時、どう対応するかといったものでした。

実験の結果、病人と被験者が2人だけで話している時には、発作中に約85%の人が、また発作から3分以内には全ての人が通報をしました。しかし、被験者が6人グループで病人と話した時には、発作中に通報したのが約30%、3分たっても60%の人しか通報しませんでした。

ラタネらはこの実験結果を踏まえ、「同じような立場の人が複数いた場合、援助行動が起こりにくくなる」と結論を出し、この状況を「傍観者効果」と呼びました。

逆に、周囲に誰もいなくて、「自分しか助けられる人がいない」時には、自分が助けようと思う人が多いということがわかりますね。

周囲に人がいた時、見てみぬふりが起こりやすくなるワケは?

では、なぜ人は周囲に人がいる(同じような立場の人が複数いる)時に、見て見ぬふりをしてしまうのでしょうか?その理由として、以下の3つが考えられています。

1.責任の分散化

周囲に人がいることで、「自分が動かなくてもきっと誰かが助けるだろう」、「周りに人がいるから自分が助けなくても非難されることはない」と判断を下しやすくなり、責任が分散されやすくなります。

2.聴衆抑制

「人が大勢いる中で目立ちたくない」「助けようとして失敗したら恥ずかしい」など、他者からのネガティブな評価に対する不安から、援助行動が抑制されます。

3.多元的無知

周りの人が何もしないのを見て「この人は助けを必要としているわけではない」「緊急性が低い」という間違った判断がされやすくなります。

まとめ~このような事態を招かないために~

自分も困っている時は誰かに助けてほしいと思うはず。もし、あなたが、助けを求める状況になった時には、不特定多数の誰かに助けを求めるのではなく、特定の誰かに助けを求めることが大切です。

例えば、倒れた時にはただ「助けて」と言うのではなく、「そこの赤い服を着ている方、救急車をお願いします」などとお願いをするようにしましょう。

そうすることで責任の分散が起こりづらくなりますし、緊急性が高いことも伝わりやすくなります。反対に、あなたが困っている人を見つけた時は、勇気を出して声をかけてみましょう。また、親が子供の前で率先して援助行動を実践してみせるなどの心がけも大切だと思います。


いかがでしたか?今回は、見て見ぬふりをしてしまう心理についてご紹介しました。このコラムを読んで、心理学に興味を持ったりもう少し勉強したいと思った方は、気軽に自宅で学べる講座もありますので、よかったらチェックしてみてくださいね。 

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【参考】
渋谷昌三『図解 すぐに使える!心理学』PHP研究所 2013 P110~111
渋谷昌三『よくわかる心理学』西東社 1999 P170~171

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